The Independentが選ぶ死ぬまでに読むべき本トップ40

  1. ジェイン・オースティン高慢と偏見
  2. スー・タウンゼント『モール君のおとなはわかってくれない』
  3. ロアルド・ダールチョコレート工場の秘密
  4. チヌア・アチェベ『崩れゆく絆』
  5. ジョージ・オーウェル『一九八四年』
  6. ダフネ・デュ・モーリアレベッカ
  7. チャールズ・ディケンズ『大いなる遺産』
  8. ハーパー・リーアラバマ物語
  9. ヒラリー・マンテル『ウルフ・ホール』
  10. レイモンド・チャンドラー『大いなる眠り』
  11. メアリー・シェリー『フランケンシュタイン
  12. エミリー・ブロンテ嵐が丘
  13. ウィリアム・ゴールディング『蠅の王』
  14. ウィリアム・メイクピース・サッカレー『虚栄の市』
  15. サルマン・ラシュディ『真夜中の子供たち』
  16. ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』
  17. シャーロット・ブロンテジェイン・エア
  18. チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ』
  19. ステラ・ギボンズ『Cold Comfort Farm』
  20. トニ・モリソン『ビラヴド』
  21. イーヴリン・ウォー『回想のブライズヘッド』
  22. フランク・ハーバートデューン 砂の惑星
  23. P・Gウッドハウス『ウースター家の掟』
  24. F・スコット・フィッツジェラルドグレート・ギャツビー
  25. アントニイ・バージェス時計じかけのオレンジ
  26. トーマス・ハーディ『テス』
  27. フィリップ・K・ディックアンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
  28. アルンダティ・ロイ『小さきものたちの神』
  29. ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』
  30. ドナ・タート『黙約』
  31. ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』
  32. ジョージ・エリオット『ミドルマーチ』
  33. J・D・サリンジャーライ麦畑でつかまえて
  34. シルヴィア・プラス『ベル・ジャー』
  35. レフ・トルストイアンナ・カレーニナ
  36. ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22』
  37. ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ『危険な関係
  38. ガブリエル・ガルシア=マルケス百年の孤独
  39. フランツ・カフカ『審判』
  40. ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ『山猫』

 

・・・2作しか読んでない。

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言葉の力ーーー高田大介『図書館の魔女』

図書館は人の知りうる世界の縮図なんだ。図書館に携わるものの驕りを込めて言わせてもらえば、図書館こそ世界なんだよ。

 

選んだことは状況や論理の然らしむる必然に過ぎない。その人固有の発露は選ばなかったことにある。人は、何を選ばなかったか、それによってのみ他ならぬ自分を顕している。

 

書物を著すというのはね、隠さないということがその本質に含まれているんだよ!書を著すならば、それは世に問うこと、世に知らせること、おのれの説く正しいところも誤ったところも、すべて人目にさらして審判を問うということだ。

 

どれほど目の前の世界が広大であっても、一度に手に取る書物は一冊きり、一度に目で追うべき行文は一本きり、辿るべき道はその都度ひとつだ。目の前にいくつの道が開けていても、二つの道を同時に歩むことは出来ない。

 だから図書館は人の命運に選択を迫る。人はそこで知ることを覚え、知りえぬことを悟る。選ぶことを学び、選びえぬことを知る。そしてひいては、高い塔で人は、生涯を選ぶ。

 

 

ロボットの力、人間の力、物語の力ーーー山本弘『アイの物語』

タイトルが素晴らしい。これ以外には考えられず、本書を読み終えた後、タイトルの意味がより重みを増してくる。

本文に出てくる用語や概念を正確には理解できていないが、そんなことは関係なくこの本は楽しめる。SFだからと敬遠すると大変もったいない。

 

物語の価値が事実かどうかなんてことに左右されないということを。物語には時として事実よりも強い力があるということを。

 

私は世界中の泣いているヒト、苦しんでいるヒトを救いたい。肉体だけでなく、心を。死んでゆくすべてのヒトに、楽しい記憶をあげたい。死が避けられないのなら、せめて楽しい記憶とともに去って欲しいんです。そして私も楽しい記憶をもらいたい。それがヒトにとっても私にとっても、良いことですから。

 

私たちはヒトを真に理解できない。ヒトも私たちを理解できない。それがそんなに大きな問題だろうか?理解できないものは退けるのではなく、ただ許容すればいいだけのこと。それだけで世界から争いは消える。 

 

震災後の現実を生きるーーー御手洗瑞子『気仙沼ニッティング物語』

著者は、手編みのセーターやカーディガンを作る「気仙沼ニッティング」の社長。大学卒業後マッキンゼーに就職。その後、ブータンの首相フェローとして産業育成の仕事に携わった経歴の持ち主。東日本大震災が起きたことをブータンで知った著者は、「日本人として、いまは日本のために働くべきではないか」と考え、帰国後現在の事業を始める。

以下、気になったところを本文から引用

 

仕事がなく、自分の足で立つことのできない状況というのはこれほど辛く、自尊心を奪ってしまうものなのか 

 

震災後の生活を現実として生き、新しい仕事を得て「よし、がんばるぞ!」と腕まくりをしている人のところにきて、「流された家の前で茫然としてください」と依頼し、「仮設住宅が背景でないと番組が成立しないのです」と言うのはいかがなものでしょうか。

 

現場は報道で見るよりも、ずっと明るくたくましいです。きっと、少しほっとすると思います。それに、友達ができて、また来たくなるかもしれない。なにしろ面白い人たちがたくさんいます。そういう自然な交流が生まれていった方が、東北はずっと元気になると思うのです。

 

気仙沼ニッティングにも、気仙沼の街にも、著者に対しても大変興味がわいてきた。ぜひ気仙沼に行ってみたい。

 

気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社

気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社

 

 

うちに帰りたい、ただそれだけなのだーーー津村記久子『とにかくうちに帰ります』

表題作がいい。大雨の中、やむを得ず事情から歩いて帰ることになった人たちの話。人の思いや、出来事を大げさでもなく、なかったことにもせず、丁寧に言葉にしていく。読後に感情が大きく動くわけではないけど、じんわりと暖かく、読む前よりちょっと前向きになれる。登場人物のオニキリが、帰宅したら親や疎遠になっている友達に連絡しようと考える気持ちがよくわかる。いい小説だった。

 

 

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

 

 

 

 

 

 

自分に正直に生きることーーー映画『キャロル』

今日から公開の映画『キャロル』。ケイト・ブランシェットルーニー・マーラが出演。監督はトッド・ヘインズ。

 

あらすじは、デパートのおもちゃ売り場で働きながら、プロのカメラマンを目指すテレーズ(ルーニー・マーラ)と資産家の人妻キャロル(ケイト・ブランシェット)が

初対面の瞬間に惹かれあい、関係をどんどん深めてゆく、というストーリー。

 

舞台となる1950年代のアメリカでは、女性同士の恋愛自体が禁止されていたらしい。キャロルが心理療法士の元に通っている、という会話がある通り、女性が女性を好きになるのは、当時では病気のように扱われていたのだろう。そうした状況下でキャロルとテレーザズのように仲を深めていくのは、映画で描かれているよりも大変な障害があったと思う。だからこそ、テレーザの最後の行動は、これまでの自分との決別、勇気、覚悟を含んだ、とても重みのある決断であり、印象に残るシーンになっていた。

 

映画の最大の見どころは、ルーニー・マーラのかわいさ。それに尽きる笑。華奢な身体と東欧系の顔がとても美しい。最初から最後までルーニーから目が離せない。ストーリーの序盤で、レストランのメニューさえも自分で決められない、と自虐的に語っていたテレーズが、最後には自分の気持ちに正直に行動する、という成長ぶりにも注目。

 

 

映画を見た帰りに原作の小説を買ったので、こちらも楽しみだ。

 

キャロル (河出文庫)

キャロル (河出文庫)

 

 

「自分を変える」が社会を変える、世界を変えるーー駒崎弘樹『「社会をかえる」を仕事にする』

とてもおもしろかった。大変読みやすいが、かといって軽い内容ではない。どこにでもいる大学生が、本気で社会を変えていくストーリー、と書くと暑苦しく、成功者の自慢話のような内容と思われるかもしれない。だが、ところどころ笑いや失敗話を交えているため、視点が上から目線にならず、だからこそ著者の思いがしっかりと伝わってくる。

 

著者は、「病児保育」問題を解決するNPO法人フローレンスの代表を務めている。

 

現在の自分の状況を考えずにはいられない。どんな仕事であっても誰かの役には立っている。確かにその通りだが、仕事に対する姿勢は人それぞれ異なってくる。この本に出てくる、著者やその他社会問題を解決しようと志高く仕事をしている人たちに比べ、自分の仕事への向き合い方があまりにも低いことに気づかされる。

お金とやりがいとを天秤にかけて、自分の価値観に照らし合わせて、どのあたりにバランスを置くか。今の自分はお金も低ければ、やりがいも低い。正直このまま仕事を続けていても何かを得られるとは思えない。

自分で何かを変えていかなければ、何も変わらない。