うちに帰りたい、ただそれだけなのだーーー津村記久子『とにかくうちに帰ります』

表題作がいい。大雨の中、やむを得ず事情から歩いて帰ることになった人たちの話。人の思いや、出来事を大げさでもなく、なかったことにもせず、丁寧に言葉にしていく。読後に感情が大きく動くわけではないけど、じんわりと暖かく、読む前よりちょっと前向きになれる。登場人物のオニキリが、帰宅したら親や疎遠になっている友達に連絡しようと考える気持ちがよくわかる。いい小説だった。

 

 

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)

とにかくうちに帰ります (新潮文庫)