言葉の力ーーー高田大介『図書館の魔女』

図書館は人の知りうる世界の縮図なんだ。図書館に携わるものの驕りを込めて言わせてもらえば、図書館こそ世界なんだよ。

 

選んだことは状況や論理の然らしむる必然に過ぎない。その人固有の発露は選ばなかったことにある。人は、何を選ばなかったか、それによってのみ他ならぬ自分を顕している。

 

書物を著すというのはね、隠さないということがその本質に含まれているんだよ!書を著すならば、それは世に問うこと、世に知らせること、おのれの説く正しいところも誤ったところも、すべて人目にさらして審判を問うということだ。

 

どれほど目の前の世界が広大であっても、一度に手に取る書物は一冊きり、一度に目で追うべき行文は一本きり、辿るべき道はその都度ひとつだ。目の前にいくつの道が開けていても、二つの道を同時に歩むことは出来ない。

 だから図書館は人の命運に選択を迫る。人はそこで知ることを覚え、知りえぬことを悟る。選ぶことを学び、選びえぬことを知る。そしてひいては、高い塔で人は、生涯を選ぶ。