ロボットの力、人間の力、物語の力ーーー山本弘『アイの物語』

タイトルが素晴らしい。これ以外には考えられず、本書を読み終えた後、タイトルの意味がより重みを増してくる。

本文に出てくる用語や概念を正確には理解できていないが、そんなことは関係なくこの本は楽しめる。SFだからと敬遠すると大変もったいない。

 

物語の価値が事実かどうかなんてことに左右されないということを。物語には時として事実よりも強い力があるということを。

 

私は世界中の泣いているヒト、苦しんでいるヒトを救いたい。肉体だけでなく、心を。死んでゆくすべてのヒトに、楽しい記憶をあげたい。死が避けられないのなら、せめて楽しい記憶とともに去って欲しいんです。そして私も楽しい記憶をもらいたい。それがヒトにとっても私にとっても、良いことですから。

 

私たちはヒトを真に理解できない。ヒトも私たちを理解できない。それがそんなに大きな問題だろうか?理解できないものは退けるのではなく、ただ許容すればいいだけのこと。それだけで世界から争いは消える。